9/3 「僕らは負けない」

始業式での話です。

今年の夏休みで一番心に残ったことを話します。
  まず、この写真を見てください。これはどういう写真かわかりますか。

DSC05414  1年半前、東日本大震災で大きな被害を受けた、宮城県石巻市立門脇小学校です。7月の終わり、実際に行って自分の目で見てきました。津波によって流されてきたたくさんの車からガソリンが漏れて、辺りは火の海だったそうです。校舎は焼け焦げて、無残な姿を今も残しています。子どもたちは学校裏の高台に避難をして無事でした。すべてが焼けましたが、校長室の金庫にあった卒業証書だけは無事でした。
  この学校の子たちは、今も近くの中学校の校舎を借りて生活しているそうです。通りかかったとき、何人かの子が野球をしていました。校舎の1階部分に「僕らは負けない」と書かれた横断幕が張ってあり、「すごい!」と思いました。
次も小学校の写真です。南三陸町の戸倉小学校です。

DSC05451 津波で壊された校舎の前に瓦礫が高く積まれています。震災の1週間前にできたばかりの体育館は、ほとんど使うことなく津波で壊されました。津波が来る前に、道路の反対側の高台にある神社に避難して、子どもたちは全員無事でした。雪が舞う寒い夜でしたが、6年生は低学年の子を建物の中に入れて、自分たちは大人の人とたき火をして外で過ごしたそうです。今は別の小学校で生活しており、この校舎は取り壊されます。
最後はこの写真です。DSC05485 1学期の読み聞かせで、ボランティアの方が読んで下さった、岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」です。風で砂が舞ってくるのを防ぐため、200年以上も前に植えられた約7万本のうち、たった1本だけ、津波に耐えて生き残りました。街は家もビルも鉄道も、何もかもがなくなり、今は道路があるだけです。地元の人たちは、「あの松のように自分たちもがんばろう」と強く思い続けてきました。
  しかし、海水は根元から松全体に染みこんで葉は枯れ、切り倒されることになってしまいました。それでも、何とかこの姿を残したいという強い思いから、幹をいくつかに切って、真ん中に鉄の棒を通し、本物の松のようにして残すそうです。
津波によって家を失った人たちは、狭い仮設住宅に今も住んでいます。震災前は300人もの児童がいた門脇小学校は、今は170人になってしまいました。それでもみんな負けないでがんばっています。

今日から2学期が始まりました。運動会、マラソン大会、学芸会といつものように行事が続きます。楽しいことばかりではなく、いやなことや辛い気持ちになることもきっとあると思います。面倒くさい、いやなことはやりたくないという気持ちは誰の心の中にもあります。
そんな時、今日見た写真のことを思い出してください。「僕らは負けない」という強い心、下級生をいたわる思いやりの心、たくましく生きた一本松のことを思い出して、私たちもがんばっていきましょう。

2022年3月

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