峯っ子だより 2月号

歌舞伎

  竹下 奈々代

clip_image002  1月中旬頃、七原明郎さんと会った時に「今年は裕唯ちゃんも日菜ちゃんも大役だからがんばって」と言われました。裕唯も日菜も口をそろえて「なんで裕唯なの?!」「なんで日菜なの?!」と言うばかり。私も歌舞伎の上手な子は他にもいるのになぜ選ばれたのかわかりませんでした。しかし、選ばれたからにはがんばってもらうしかないと思い、裕唯と日菜には「その役に合うだろうと選んでくれたのだからありがたくいただき、がんばるんだよ。」と伝えました。

台本をもらってきて台詞の多さにびっくりしました。こんなに多い台詞を覚えられるだろうか?! また所作もあり、できるのだろうか?!と心配でした。

稽古初日、裕唯、日菜は少し台詞を覚えたくらいで行きましたが、6年生の子は台本なしですらすら言える子もいて感心しました。さすが6年生!裕唯、日菜も見習ってほしいと思いました。「台詞をまず覚えなければ所作ができないので台詞をとにかく覚えて」と伝えました。

「こんなに沢山の台詞を覚えられない。」と愚痴る事もありましたが、一週間を過ぎる頃には台詞が言えるようになっていました。やる気になればできてしまうところがすごいなと思いました。

clip_image004 歌舞伎の練習に加えて習い事もあり、習い事は休むと振替がない為、内容が進むので自分だけ遅れてもかわいそうだと思い、なるべく習い事にも行かせていたので本当にハードスケジュールだったと思います。

所作も沢山あり、毎日覚えることばかり。練習から帰ってきてからも宿題がすめば、好きなゲームや遊びも我慢し、歌舞伎のビデオを見て所作を覚えるように努めていました。

本番の歌舞伎では裕唯、日菜も緊張して間違えたところもあったようですが、やりきった達成感の表情はきらきらと輝いてみえました。

お師匠さんをはじめ、地域のみなさん、先生にご指導いただき、裕唯、日菜が成長できたと思っています。本当にありがとうございました。また来年もご指導をよろしくお願いします。

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井の中の蛙大海を知らず、されど…

5・6年担任 村松 健太

「井の中の蛙大海を知らず」という言葉があります。この諺は『荘子・秋水』の「井蛙(せいあ)は以て海を語るべからざるは、虚に拘ればなり」という文に基づくものだそうです。現在でもよく使われる諺ですが、この言葉に続きがあるのをご存知でしょうか?中国にもともとあったものではなく、諸説ありますが、大正から昭和にかけての芸術家、河井寛次郎という方が文章の中で書いたものが、基になり、今でも表現を変えながら残っているらしいです。「井の中の蛙大海を知らず」その後にこう続きます、「されど、空の青さを知る」―――

4月、田峯小学校に赴任してきて、子どもたちと出会い、驚いたことの一つに、掃除についてがあります。掃除の時間中、集中して汚れと向かい、一心に学校をきれいにする。その姿に感動したので、さっそく子どもたちにそのことを伝えました。子どもたちの反応は期待に反して、困惑の表情。この先生は何を言っているんだ、と。戸惑う私に対して、6年生の子が止めの一言。「先生、そんなの当たり前じゃん」。

1年間田峯小学校で、子どもたちと過ごす中、ここにしかない、ここでしか経験できない素晴らしいものをたくさん見つけることができました。やるべきことを当然としてやることのできる子どもたち、一人ひとりが埋もれることなく参加できる様々な学習、温かく見守って下さる地域の人々、歌舞伎や田楽などの伝統行事、挙げればきりがありません。その中で過ごしている子どもたちにとっては「当たり前」のことだと思います。しかし、将来この地を離れ、外から自分たちの故郷を見たとき、その素晴らしさに気付く事でしょう。私自身も、15の齢に北設楽郡を離れ、今まで「当たり前」のようにあったものがない環境に身を置きました。別段自分の村が好きだったわけではなかったはずですが、いざ離れてみると、寂しさを感じました。町の中を建物に囲まれて歩いていると、いい所だったなぁと不意に故郷が恋しくなったことを覚えています。辛い時や苦しい時も、故郷での思い出は、ずっと私自身を支えてくれました。

clip_image006 広い海を目の前にすると、それに目を奪われてしまい、なかなか空を見上げることもないでしょう。狭い井戸の中だからこそ、頭上に広がる空の青さに気付くことができるのではないでしょうか。これからも子どもたちと一緒に、田峯の空の青さを見つけていきたいです。まだまだここには、1年間では気付けなかったものがたくさんありそうで、とても楽しみです。そして、子どもたちが、将来この地を離れたとしても、田峯で知った青い空を見上げ、上を向いて歩いて行ってくれたらなぁと思います。

井戸から出た蛙は、初めて見た海の広さに戸惑うかもしれません。ですが、きっと蛙は怯むことなく泳ぎだすことでしょう。井戸の中で知った空の青さを支えにして…

2020年10月

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